溺れる人

日本映画さいこー

溺れる人 [DVD]

溺れる人 [DVD]

ぼっさ〜と観ていたら絶対わからないね、これ。おいらも途中ちょいダレた。けど日本映画の微細な表現方法がとても大好きなのです。
ストーリーは浴槽にて溺れる妻を発見し気が動転する夫がいて、救急車を呼ばずに死体をソファに安置する。翌日になると死んだはずの妻が蘇っていて驚きを禁じえないが、妻が死んでいるのではと夫は疑う。妻の体が冷たく感じ、家の中で死臭のようなものが漂う中で、夫は自分の錯覚ではないのかと思い込み始める。
妻は妻で今までとは異なる感情をどこかで抱き自分の中の何かが「死んで」しまっている。お互いに自分が悪いのではと思いこむことで、二人の仲は破局へと突き進んでいく。

実際に死人が蘇るなんてのはナンセンスな話だが、ある日些細な出来事をきっかけとしてそれ以前と以後でまったく人間関係が変化してしまうことは誰しも経験することだと思う。妻が溺れ死ぬことで(=妻の内面で何かが死ぬことで)、夫も妻が死んだのではないのかという妄想へと溺れていく。
妻への猜疑心を強める夫と、気持ちが上の空で夫への想いが欠けた妻。途中からこの出来事を相手のせいにするのでなく、二人ともこの出来事を「自分のせい」にして責任を自分に帰属させお互いを思いやろうとするが、相手のことを思うことが最終的に破局をもたらすという逆説に陥っている。

ラストの夫(塚本晋也)と妻(片岡礼子)の間で交わされるかみ合わない会話が象徴的。相手を抱いているときの塚本晋也の妻を手繰り寄せる手がすべてを物語っている、なんて。