シャウト・オブ・アジア

渋谷での面接後に映画館へ。面接官が「これからも就職活動頑張ってください」だって。ほんとにやな奴。

韓国の有名シンガーソングライターであるカン・サネがアジア各地(日本、中国、インドネシア、フィリピン)に旅に出て様々なミュージシャンと交流を深めアジアならではの音楽を奏でようとするさまを描いたドキュメンタリー。日本からは忌野清志郎、Marieが出演。その他各国のアーティストが出演。
感想としてはまずは音楽がとてもよかった。インドネシアのロックバンドであるスランクのライブや、Marieの歌声など。あと印象的だったのはここに出てくるアーティストは故郷なき人々であること。日本とアメリカのハーフとして生まれたMarieや、南北分断によって家族がバラバラになってしまった韓国のアーティスト、はては植民地時代の影響によりアメリカナイズされてしまったフィリピン。
この映画に出てくるのはみな故郷なきディアスポラである。その彼ら/彼女らは「平和で安心できる場所」を求めて音楽を奏でる。それは自分や民族のルーツを探しあてる旅である。
ここに出てくるのは非常にエモーショナルで心動かされる音楽。バックグラウンドとか抜きにして音楽としてすごい重い。相手の感情が伝わってくるようで心動かされた。
本当にエモーショナルな音楽は道楽で生まれるのではなく、その個人が意識的/無意識的であれ自分の外に出さなければ生きていけないものの発露であるように感じた。

ただ、最後にWe are the worldぽく、Asia is one と言っていたが、個人的にすごい複雑な感情を抱いた。国境なんて人が引いた線に左右されないで理解しあうのは大事かもしれないが、それでディアスポラであるアーティストの「平和で安心できる場所」が見つかるわけがない。結局のところ彼らは自分のルーツがないという痛みを抱えて生きていかなければいかないという現実を、「アジアは一なり」で安易に終わらせてはいけない。